よく噛める子は運動も得意?阪大の研究でわかった「噛む力」と体力・肥満の関係!?

気になる情報

 こんにちは、MONです。今日は産経ニュースで紹介されていた「よく噛める子は運動も得意 阪大研究グループが突き止めた『咀嚼力』と肥満リスクの関係」という記事についてお話しします。

 大阪大学の研究グループが、大阪市の小学4年生を対象にした大規模調査で、「噛む力が強い子どもほど、体力テストの成績が良い」という関連を明らかにしました。しかも同じ研究グループは、その前の年に「噛む力が弱い子・早食いの子は肥満になりやすい」という調査結果も発表しています。この記事では、2つの研究の内容に加えて、「そもそもなぜ噛む力が運動能力に関係するのか」という気になるポイントも掘り下げてみます。

結論

  • 大阪市の小学4年生1,225人を対象にした調査で、噛む力が強い子どもほど「反復横跳び・20mシャトルラン・50m走・ソフトボール投げ」などの体力テストの成績が良いことがわかりました。 身長や体重の違いを考慮しても、この関連は変わりませんでした。
  • 同じ研究グループが前年に発表した調査では、噛む力が弱い子・早食いの子ほど肥満になりやすいという結果が出ています。 男児では、この2つの要因が両方揃うと肥満リスクが3倍に跳ね上がりました。
  • 今回の研究では「なぜ関連するのか」という仕組みまでは明らかになっていません。 ただし、噛みしめる動作が全身の筋力やバランス、瞬発力に関わるという報告は、スポーツ歯学の分野で以前から知られています。
  • 「よく噛んで食べる」という当たり前の習慣が、体力・肥満・虫歯予防などいろいろな面で子どもの土台になっている、というのがこの2つの研究から見えてくることです。

 ここからは、この結論の中身をひとつずつ見ていきましょう。


阪大研究グループが発表した「噛む力と運動能力」の関係

 この研究は、大阪大学大学院歯学研究科の池邉一典教授らの研究グループが、大阪市教育委員会・株式会社ロッテと連携して行ったものです。

どんな調査だったのか

  • 対象:大阪市内29校の小学4年生1,225人(男子608人、女子617人)
  • 期間:2023年4月〜2024年3月
  • 咀嚼能力の測定方法:色が変わるタイプの専用ガム(咀嚼チェックガム)を1分間噛んでもらい、色の変化を専用アプリで解析。しっかり噛めているほど色が大きく変化します
  • 運動能力の測定方法:握力・上体起こし・反復横跳び・20mシャトルラン・50m走・立ち幅跳び・ソフトボール投げの7種目の体力テスト

わかったこと

 咀嚼能力が高い児童ほど、反復横跳び・20mシャトルラン・50m走・ソフトボール投げ、そして総合的な体力スコアで良好な成績を示しました。身長・体重の違いを考慮した分析でも、この関連は変わらなかったとのことです。

 男女で見ると、男子は「上体起こし・20mシャトルラン・ソフトボール投げ・総合体力スコア」との関連が、女子は「20mシャトルラン」との関連が確認されたそうです。

 研究チームは「『しっかり噛める』ことが子どもの運動能力と関連する可能性を示している」とコメントしています。ただしこの調査はある一時点での関連を見た「横断研究」のため、「噛む力が強いから運動ができる」という因果関係まで証明されたわけではない、という点には注意が必要です。

(論文:Journal of Dentistry 2026年7月号、DOI: 10.1016/j.jdent.2026.106867)


実はこのグループ、前年には「噛む力と肥満」の関連も発表していた

 今回の運動能力の研究には、実は前段となる研究があります。同じ池邉教授らのグループが2025年3月に発表した、「噛む力と肥満」の関連についての調査です。

どんな調査だったのか

  • 対象:大阪市の小学4年生1,403人(9〜10歳)
  • 咀嚼能力の測定方法:同じく咀嚼チェックガムで評価
  • 肥満の判定方法:身長・体重から算出した肥満度が+20%以上の場合を「肥満」と判定
  • 食べ方の調査:「早食い」「口いっぱいに頬張って食べる」といった食べ方の癖をアンケートで調査

わかったこと

 全体で見ると、「早食い」の子どもは肥満リスクが1.73倍、「咀嚼能力が低い」子どもは1.50倍という結果に。さらに男児に限定すると、この2つの要因が両方揃った場合、肥満リスクは3.00倍まで上がりました(女児では統計的にはっきりした関連は見られなかったそうです)。

池邉教授は、この研究について「生涯を通じて噛むことが全身の健康にどのように関わるのか解明するための基礎資料となる」と述べています。

(論文:Journal of Dentistry 2025年3月号、DOI: 10.1016/j.jdent.2025.105666)

 つまり、産経ニュースの記事タイトルにあった「咀嚼力と肥満リスクの関係」は、この前年の研究のことを指しており、今回の運動能力の研究とあわせて「噛む力が子どもの体格・体力の両方に関わっているらしい」という、同じ研究グループによる一連の成果というわけです。


なぜ「噛む力」が運動能力に関係するのか?考えられるメカニズム

 ここからは記事本文にはなかった、少し発展的な話です。今回の阪大の研究では、噛む力と運動能力がなぜ関連するのかという仕組みそのものまでは明らかにされていません。ですが、「噛むこと」と「体全体の運動能力」の関係については、スポーツ歯学の分野で以前からいくつかのメカニズムが指摘されています。

  1. 噛むと脳が活性化する:噛む動作によって脳への血流が増え、集中力や瞬時の判断力が高まるとされています
  2. 噛みしめると筋力が上がる:ガムを噛んだ直後に膝関節の筋力を測定すると、噛まなかったときに比べて筋力が約8%アップしたという報告もあります
  3. 咀嚼筋は「抗重力筋」の仲間:噛むための筋肉は、姿勢を保つ筋肉とも連動しており、日頃からよく噛む習慣がバランス能力の土台になっている可能性があります
  4. 力を出す瞬間に歯を食いしばることで、全身の瞬発力が高まる:反射のメカニズムを介して、噛みしめが全身の筋出力を高めると考えられています

 こうした背景もあってか、トップアスリートの中には噛み合わせやマウスガードの調整をパフォーマンス向上の一環として取り入れている選手もいるそうです。「本番で歯を食いしばれる」ことと、「普段からしっかり噛めている」ことは、案外地続きなのかもしれません。


子どもの「噛む力」を育てるためにできること

 2つの研究から見えてくるのは、「よく噛んで食べる」というシンプルな習慣が、体力・体格の両面で子どもの土台になるかもしれない、ということです。ご家庭で意識できるポイントをまとめました。

  • 早食いを避け、ひと口ずつよく噛む習慣をつける:早食いは肥満リスクにも直結する要因
  • 食材の硬さや大きさを工夫する:やわらかい食事ばかりだと、噛む回数がどうしても減ってしまう
  • 「ながら食べ」「口いっぱいに頬張る」食べ方を見直す:噛む回数・時間が不足しがちになる
  • 乳歯・永久歯の虫歯や、噛み合わせのズレを早めにチェックする:痛みや噛みにくさがあると、無意識に「よく噛まない」食べ方が習慣化
  • 仕上げ磨きや定期検診を通じて、口の中の状態を良く保つ:しっかり噛める状態そのものを維持することが土台

 「運動能力を上げたいから噛む」というより、よく噛んで食べる習慣の結果として、体力や体格にも良い影響が及んでいるかもしれない、というのがこの2つの研究のポイントです。


まとめ

  • 大阪大学の研究グループが、大阪市の小学4年生1,225人を対象にした調査で、噛む力が強い子どもほど反復横跳び・シャトルラン・50m走・ソフトボール投げなどの体力テストの成績が良いことを発表した
  • 同じグループが前年(2025年)に発表した調査では、噛む力が弱い子・早食いの子ほど肥満になりやすく、男児は両方揃うと肥満リスクが3倍になった
  • 噛む力と運動能力がなぜ関連するのかという仕組みは今回の研究では明らかになっていないが、噛みしめが筋力・バランス・瞬発力に関わるという報告はスポーツ歯学の分野で以前からある
  • どちらも横断研究のため因果関係の証明ではないが、「よく噛んで食べる」習慣が体力・体格の両方に関わっている可能性を示す結果といえる

「うちの子、早食いかも」「あまり噛まずに飲み込んでいる気がする」と思い当たった方は、まずは食事の時間を少し長めにとって、ひと口ごとによく噛む習慣づけから始めてみてはいかがでしょうか。

歯を大事にして、笑顔の日々を送りましょ~!


参考

元記事

研究の詳細(噛む力と運動能力)

研究の詳細(噛む力と肥満)

噛む力とスポーツパフォーマンスの関係

※この記事は一般的な情報をまとめたものです。ご紹介した研究はいずれも一時点の関連を調べた横断研究であり、因果関係を証明したものではありません。お子さまの噛み合わせや虫歯が気になる方は、歯科医院にご相談ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました