歯科治療『被せ物編』 素材の違いを解説!

歯の基礎あれこれ

 こんにちは、MONです。今日は前回の「詰め物編」に続いて、歯の被せ物についてお伝えします。

 「奥歯に銀歯が入っているけど、笑ったときに気になる」「前歯の被せ物が黄ばんできた」「セラミックがいいって聞くけど種類が多すぎて選べない」──そんなお悩みをお持ちの方、多いのではないでしょうか?今日はそのモヤモヤが晴れるように、選択肢を一つずつ整理していきます。

 結論被せ物は、自費のものだと6万〜18万円程度が目安です。そして自費のセラミックにも種類があり、「見た目の自然さを最優先するならe-max」「奥歯で強度が必要ならジルコニア」というように、得意分野が違います。どれが一番良いかではなく、どの歯に、何を優先するかで選択が変わってきます。

そもそも「被せ物(クラウン)」ってなに?

 歯科では、被せ物のことを『クラウン』と呼びます。英語の crown(王冠)が語源で、歯の頭にすっぽりかぶせる形が王冠に似ていることから、この名前がついています。

 前回の記事でご紹介した「詰め物(インレー)」が歯の一部分を補うものだったのに対し、クラウンは歯を全体的に削って、上から丸ごと覆う治療です。

 こんなときにクラウンが必要になります。

  • むし歯が大きく、詰め物では対応できない(C3〜C4)
  • 神経を取る治療(根管治療)をしたあと
  • 歯が大きく欠けたり、割れたりしたとき
  • 過去の大きな詰め物が繰り返し取れてしまうとき

 そして大事なポイントですが、クラウンはどの歯にも適応があります。前歯でも、小臼歯でも、いちばん奥の大臼歯でも入れられます。ただし「どの素材を選べるか」は歯の位置によって変わってくるので、そこは後ほど詳しくお話しします。

保険診療と自費診療、何が違う?

 前回の詰め物編でもお伝えしましたが、大原則はこうです。

 保険診療は「噛む機能を取り戻すこと」が目的。 国が定めた材料と方法の中で、しっかり噛めるように歯の形を回復します。費用は抑えられますが、選択肢は限られます。

 自費診療は、そこに”プラスα”が加わります。

  • 天然の歯に近い、審美的な見た目の良さ
  • 何年経っても変色しにくい素材
  • 歯との封鎖性が高く、二次カリエス(詰め物・被せ物の下で再発するむし歯)のリスクが低い
  • 金属を使わない選択肢が多く、金属アレルギーのリスクがない
  • 型取り材・石膏・接着剤まで、精度の高い材料を使える

 被せ物は詰め物よりも見える面積が大きいぶん、この「プラスα」の差が見た目にはっきり出やすい治療でもあります。

保険で作れる被せ物

 まずは保険適応の被せ物から、解説します。

全部金属冠(いわゆる銀歯)

 12%金銀パラジウム合金で作る、全体が金属の被せ物です。奥歯(小臼歯・大臼歯)に使われます。

メリット
  • 割れる心配がほとんどなく、強度は十分
  • 費用がいちばん安い
デメリット
  • 銀色で目立つ。笑ったとき、大きく口を開けたときに見える
  • 金属アレルギーのリスク、経年で歯ぐきが黒ずむことがある
  • 金属は歯と接着しにくいため、隙間から二次カリエスになりやすい

硬質レジン前装冠

金属のフレームの、外から見える面だけに白いレジン(樹脂)を貼り付けたものです。前歯(3番まで)に保険適用されます。

メリット
  • 保険で前歯を白くできる
デメリット
  • 樹脂(レジン)は吸水性があるため、数年で黄ばみ・変色が出やすい
  • 表面の樹脂が欠けたり剥がれたりすることがある
  • 裏側は金属なので、歯ぐきの境目が黒く見えることがある

CAD/CAM冠

 ハイブリッドレジンのブロックを機械で削り出して作る、白い被せ物です。2014年に保険導入され、小臼歯のみの保険適応から始まり、大臼歯へと拡大、現在は前歯も保険適応となりました。

メリット
  • ◎ 保険で白い被せ物ができる。金属アレルギーの心配なし
  • ◎ 歯ぐきが黒くならない
デメリット
  • セラミックほどの強度・透明感はなく、経年で変色することがある
  • 割れたり外れたりするリスクがセラミックより高い
  • 大臼歯への適用には噛み合わせなどの条件があり、施設基準を届け出た歯科医院に限られる

自費で選べる被せ物

 ここからが本題です。費用は歯科医院によってかなり幅があるので、一般的な相場としてご覧ください。

ハイブリッドセラミッククラウン/約6万〜9万円

 セラミックの粒子と樹脂(レジン)を混ぜ合わせた素材です。自費の中ではもっとも手が届きやすい価格帯。

 構造としては、金属のフレームの表面にハイブリッドセラミックを貼り付けたタイプが一般的です。このとき使われる金属は保険の銀歯で使われるのと同じ12%金銀パラジウム合金を使用するのが一般的。(歯科医院によっては、金属を使わないフルハイブリッドのタイプを扱っているところもあります)。

メリット
  • 自費の中では安価。保険の樹脂より変色しにくい
  • 適度なやわらかさがあり、噛み合う相手の歯を傷めにくい
デメリット
  • 樹脂が含まれるため、年数が経つと着色・変色する
  • すり減りやすく、透明感はセラミックに及ばない
  • 金属フレームを使うタイプの場合、金属アレルギーのリスクや、歯ぐきが黒ずむ可能性は残る

 向いている人:費用を抑えつつ、保険の銀歯やレジンよりは見た目を良くしたい方。

メタルボンド(陶材焼付鋳造冠)/約9万〜15万円

 金属のフレームの表面に、セラミック(陶材)を焼き付けたものです。オールセラミックが普及する前から使われてきた、実績のある被せ物です。

 ここで使われる金属は、ハイブリッドで使用する金属とは別物です。 メタルボンドのフレームには、プレシャスメタル(貴金属)やセミプレシャスメタル(準貴金属)の「陶材焼付用合金」が使われます。プレシャスは金の含有量75%以上、セミプレシャスは金の含有量50~75%と含有量の違いがあります。生体親和性が高い金属の為、金属アレルギーが起こしにくい。

 なぜわざわざ高価な金属を使うのか。理由はセラミックの焼き付け方にあります。陶材は900℃前後の高温で焼き付けて歯の形を作っていくため、フレームの金属にはこんな条件が必要になります。

  • その高温に耐えて、変形しないこと
  • 熱で膨らむ度合い(熱膨張係数)が陶材と近いこと。これがズレていると、冷えたときにセラミックが割れてしまいます
  • 表面にできる酸化膜を通じて、陶材と化学的にしっかり結合できること

一方、ハイブリッドセラミックはレジン系の材料なので、高温で焼く必要がありません。だから、より一般的な12%金銀パラジウム合金でも作れるというわけです。

 同じ「金属フレーム+白い表面」でも、中身の金属のグレードが違う。ここが両者の大きな差で、貴金属を使うメタルボンドのほうが金属アレルギーのリスクは低く、歯ぐきの黒ずみも起こりにくいとされています。

メリット
  • 表面がセラミックなので変色しない、ツヤが美しい
  • 中身が金属なので強度が高く、長いブリッジや大臼歯にも対応しやすい
デメリット
  • 中の金属が光を通さないため、天然歯のような透明感は出しにくい
  • 経年で歯ぐきが下がると、歯と歯ぐきの境目に黒いラインが出ることがある(ブラックマージン)
  • 金属イオンで歯ぐきが黒く着色することがある(メタルタトゥー)
  • 生体親和性が高いが、少なからず金属アレルギーのリスクがある。
  • 表面のセラミックが欠けると修理が難しい

 向いている人:奥歯やブリッジで強度を優先したい方。ただし前歯の審美性を最優先するなら、次のe-maxやジルコニアボンドのほうが有利です。

e-max(オールセラミック)/約8万〜15万円

 二ケイ酸リチウムというガラスセラミックで作る、金属を一切使わない被せ物です。審美性を求める方に、最も最適な選択肢のひとつです。

メリット
  • 透明感が天然歯にいちばん近く、光の透け方まで自然。色調のバリエーションも豊富
  • 変色しない。吸水率が低く、着色汚れにも強い
  • 歯と化学的に接着するため封鎖性が高く、二次カリエスのリスクが低い
  • 金属不使用で、歯ぐきが黒くならない・金属アレルギーの心配なし
  • 熱を伝えにくいので、しみにくい
デメリット
  • ジルコニアほどの強度はなく、強い衝撃で割れることがある
  • 厚みを確保するため、ある程度歯を削る必要がある
  • 大臼歯や長いブリッジには不向きなことも

 向いている人:前歯や、笑ったときに見える小臼歯。見た目の自然さを最優先したい方。

ジルコニアボンド(ジルコニアセラミック)/約13万〜18万円

 メタルボンドの”金属フレーム”を、白いジルコニアに置き換えたものとイメージすると分かりやすいです。土台となるジルコニアの上に、セラミックを職人の手で盛り上げて(築盛して)色や形を作り込みます。

メリット
  • 強度の高いジルコニアが土台なので、強さと美しさを両立できる
  • 金属を使わないので、ブラックマージンやメタルタトゥーの心配がない
  • 手作業で色を作り込めるため、周りの歯に合わせた繊細な色調再現ができる
デメリット
  • 費用は高めになりやすい
  • 表面に盛ったセラミックが欠ける(チッピング)ことがある
  • 製作に手間がかかり、期間も長め

 向いている人:前歯で、審美性と強度を気にする方におすすめ。

⑤ フルジルコニア/約10万〜15万円

 全体をジルコニア一種類だけで作る被せ物です。「人工ダイヤモンド」とも呼ばれる素材で、曲げ強度は800MPa以上と、e-maxの約2倍。

メリット
  • とにかく強い。割れる心配がほとんどない
  • 変色しない。金属アレルギーの心配なし
  • 薄く作れるので、削る量を抑えられることがある
  • 表面のセラミックがないので、チッピングが起きない
  • △ 透明感はe-maxやジルコニアボンドにやや劣る(近年の材料はかなり改善されています)
  • △ 硬すぎるため、噛み合う相手の歯をすり減らす可能性がある
デメリット
  • 透明感はe-maxやジルコニアボンドにやや劣る(近年の材料はかなり改善されています)
  • 硬すぎるため、噛み合う相手の歯をすり減らす可能性がある

 向いている人:奥歯、噛む力が強い方、歯ぎしり・食いしばりのある方、ブリッジ。

どの歯に、どの素材?目安をまとめると

部位優先されるもの相性の良い素材
前歯見た目の自然さe-max、ジルコニアボンド
小臼歯(笑うと見える)見た目+そこそこの強度e-max、ジルコニアボンド
大臼歯噛む力への強さフルジルコニア、メタルボンド
ブリッジ(連結)強度フルジルコニア、メタルボンド

 前歯は”見せる歯”、奥歯は”働く歯”。この住み分けを意識すると、選びやすくなるかもしれませんね。

歯ぎしりが強い方は「ナイトガード」を

 セラミックを選ぶ方には特に知っておいてほしいポイントです。

 セラミックは硬くて美しい素材ですが、想定を超える力がかかると割れることがあります。そして、その”想定を超える力”を生み出す代表格が歯ぎしり・食いしばりなんです。

 寝ている間の歯ぎしりは、自分ではまず気づけません。しかもその力は、起きているときに噛む力の何倍にもなると言われています。せっかく十数万円かけて入れたセラミックが、数年で割れてしまう──その原因が歯ぎしりだった、というのは残念ながらよくあるケースです。

 そこでおすすめしたいのがナイトガード(就寝時に装着するマウスピース)です。

  • 歯やセラミックの代わりに、ナイトガードがすり減って守ってくれる
  • 厚みのぶん噛み合わせが少し高くなり、食いしばる力そのものが弱まる
  • 保険適用で作ることができ、3割負担で4,000〜5,000円程度が目安(治療目的と判断された場合)
  • 上下の歯の型を取って作るので、来院は2回ほど

 自費のセラミック治療では、「ナイトガードを使用していること」が保証の条件になっている歯科医院も少なくありません。高価な被せ物を長持ちさせるための保険、と考えると納得しやすいかもしれませんね。

 朝起きたときにあごがだるい、歯がしみる、家族に歯ぎしりを指摘されたことがある──ひとつでも当てはまる方は、被せ物を入れる前に一度相談してみてください。

迷ったときの考え方

 「結局どうすれば?」という方のために、選ぶときの目線を整理してみます。

見た目を優先するなら、”どこまで見えるか”を鏡でチェック

 大きく笑ったとき、実は小臼歯(前から4〜5番目)までしっかり見えます。「奥歯だから銀歯でいいや」と思っていた歯が、案外見えていることも。一度、鏡の前で大きく笑ってみてください。

“今きれい”より”10年後もきれい”

 保険の硬質レジン前装冠は、入れた直後は白くてきれいです。でも数年で黄ばみ、周りの歯との色の差が目立ってきます。セラミックが選ばれる理由は、白さそのものより変色しないことにあります。

歯ぐきのラインも意外と見られている

 金属を使った被せ物は、歳月とともに歯ぐきの境目が黒く見えてくることがあります。マスクを外す機会が増えた今、ここを気にされる方はとても増えました。金属を使わない素材なら、この心配がありません。

そして、費用は「年あたり」で考えてみる

 15万円の被せ物が15年もつなら、年あたり1万円。仮に保険の銀歯が5年で作り替えになり、そのたびに歯を削るとしたら──どちらが自分にとって納得できるか。そんな考え方もあります。

まとめ

  • 被せ物は歯科では「クラウン」と呼び、前歯から奥歯まですべての歯に適応がある
  • 保険は全部金属冠、硬質レジン前装冠、CAD/CAM冠
  • 自費はハイブリッド(約6万〜9万円)、メタルボンド(約9万〜15万円)、e-max(約8万〜15万円)、ジルコニアボンド(約13万〜18万円)、フルジルコニア(約10万〜15万円)
  • e-maxは透明感が天然歯に最も近く、前歯向き。フルジルコニアは強度が最高で奥歯向き
  • ジルコニアボンドは強さと繊細な色調再現を両立。
  • メタルボンドは強度と実績があるが、ブラックマージンや金属アレルギーのリスクがある
  • 同じ「金属+白い表面」でも、ハイブリッドは金銀パラジウム合金、メタルボンドは金合金などの貴金属と、使う金属のグレードが違う(陶材を900℃で焼き付けるため専用の合金が必要)
  • 保険素材は変色・金属アレルギー・歯ぐきの黒ずみといった弱点がある
  • 歯ぎしり・食いしばりのある方は、ナイトガードの併用がおすすめ

 被せ物は、一度入れたら10年、15年と付き合っていくものです。「安いから」「勧められたから」ではなく、自分がどこを大切にしたいかを決めてから相談すると、納得のいく選択ができると思います。

 気になることは遠慮なく、歯医者さんで聞いてみてください。

歯を大切にして、笑顔の日々を送りましょ〜!

※費用はいずれも一般的な目安です。保険診療の自己負担額は診察料・検査料等により変動し、自費診療の価格は歯科医院ごとに異なります。取り扱う素材や適応の判断も歯科医院によって異なりますので、実際の内容・金額は受診される歯科医院にご確認ください。

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